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心を届けるハグニケーション第2回

人の笑顔を見るためになにができますか 病気の体験もネタに

サブタイトル

中部経済新聞
常に「自分の出来ること」を考え、実践している人が一人いるだけで、その姿は不思議とまわりに伝播し、周りの人にも良い影響を与えていきます。

今年に入ってから、三重県の大台町、紀宝町、御浜町と、いずれも昨年9月の台風12号の被災地区に通わせていただいています。この三重県国保連合会さんの取り組みは、高齢化、過疎化、さらに台風による災害など地域が抱える課題に、地域のお年寄りや子育てママがコミュニティを強くすることと、日常の対話力をあげること、そして自分で簡単にできる、「心と体のセルフメンテナンス」を手軽にできる方法を知って頂き、自分の力で自分を元気に「自分をハグ」する習慣をつくろうというものでした。
「体をほぐすと心もほぐれる。」「私が笑うとあなたも笑う。」そんな思いで、私がずっと大切にしてきたことは、できるだけ住民の方自身が話すための場づくりをしたことです。大きな災害の後、ずい分がんばってきたこの一年、「疲れた」「しんどい」という言葉さえも封印し続けたままの笑顔もありました。

紀宝町では大里地区、鮒田地区、成川地区と被害の多かった3か所を回りましたが、自宅が2階まで水没した人もたくさんいらっしゃいました。
その紀宝町鮒田で逢野実恵子さん(60才)との出会いがありました。彼女は台風の1か月前にがん初期の告知を受け、「これから治療をしていこうね」というタイミングで家が2階まで水没しました。もともとエアロビクスなどの指導をされており、現在は地元のお年寄りに体操の指導をされています。体には自信があったのに、自分が病気では地元のお年寄りを元気にできない!そう思って、毎日手を温めてお腹をさすりながら、自らの病気に名前を付けて「私には役割があるの、ガン子ちゃんいなくなってね」と、語りかけたそうです。台風から1か月、奇跡的にがんは消えて、現在は以前にも増して地域のお年寄りのためにと活動されています。

「私ね、お年寄りに会うとハグしちゃうのよ」という逢野さんは、底抜けに明るくてこの病気の体験さえもネタにして笑い飛ばします。
「みなさんが本当に喜んでくださるから、私のほうが元気を頂いてるのよ」
と、「触れる」ことのパワーを実感されています

ハグは大切な人に届ける非言語コミュニケーション。「手を広げる」逢野さん自身が元気であること、心にゆとりがあることが大切だったのです。形だけのハグは伝わってしまいますから・・・。逢野さんの想いは、「心も体も元気になってほしい」「人の喜ぶ顔が見たい」ただそれだけです。

どんな状況であっても志を抱き続ける姿は、地域の同世代の女性にも良い影響を与えています。彼女たちが学ぼうとする姿勢は「自分のため」ではなく「人のため」です。
明るくはつらつとしてスタイルが良い女性たち。彼女たちの存在は、確実に地域に根付き広がり始めていました。

様々な取り組みをしている役場の方々も、どんな企画よりもこのような住民の存在にとっても助けられているということでした。
中部経済新聞社 本紙2012年11月14日005面01版
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