中部経済新聞
私たちは、人生の中で誰といちばん多くのコミュニケーションをしているでしょう。それは、家族でも部下でも恋人でもなく、自分自身なのです。
部下と会話するとき、大切なことのひとつに客観的視点があります。
部下が、物事を客観的に受け止められるようになるためには、自分自身も客観的になるための習慣を持つことが大切です。思いが強すぎる時、問題が起きた時など、感情が先走ることがあります。そんな時、自分に問いかけながら、書くこと、話すことはとても効果的です。
名古屋テレビ塔の大澤和宏社長と対談させていただいた時の話です。「社長として社員さんとのコミュニケーションで意識していることには、どんなことがありますか?」
との質問に対して、頂いた答えを当時の対談録にこんな風に書きました。
情熱を持って話しても、相手には「叱られている」感じに伝わってしまう。
これを回避するために続けていることは、文章化すること。書いていくと、感情と事実がごちゃ混ぜになっていることに気づける。読み返してみると、
「言いすぎたな」「足りなかったな」「もう少し突っ込んでいくべきだったな。」
と、振り返ることもできる。
1年後 3年後 10年後どうなるのかを考えるのが、社長の仕事。
実態で仕事をする人たちと、ギャップが生じるので、書いて冷静になってから直球で伝える。「僕は、直球しか投げないよ」と言われる大澤社長も、「書きながら」事実と感情を分ける事前作業をされていました。
人の人生は、無意識の問いかけでつくられています。悪いことが起きたとき、多くの人は「なんでまた悪いことが起きたんだ」「なんて俺は運が悪いんだ」「なんで同じ失敗ばかりなんだ」と自分に否定の問いかけをしてしまいます。すると脳の検索機能は、自分や部下のできない理由、ダメな理由を検索にいきます。これでは、冷静な表情も会話もできず、次の行動に向かうことはできません。
メンタリングでは、物事を、①客観的 ②好意的 ③機会的の3原則でプラス受信します。大澤社長のように感情に流されない「客観的」、相手の発言、行動を好意をもって考える「好意的」、そして出来事をチャンスととらえる「機会的」この3つです。
「本当はどうなったら良かったんだろう(客観的)」「自分が成長するために、ここで学んだことはなんだろう?(好意的)」「このピンチをチャンスと捉えたら、何のチャンスだろう?(機会的)」問いかけをこんな風に変えてみます。
人の行動の違いは、物事に対する受け止め方の違いなのです。大切なのは「感情」を「事実」と切り離して冷静に前向きに考えなおす、自分への問いかけの習慣なのです。