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コミュニケーション診察室第8回

人生は問いかけでつくられている

中部経済新聞
前回の「聴くということ」いかがでしたか?私自身も聴くことの難しさと重要性を実感する毎日です。人を育てるって時間と愛情が必要なんですね。

さて、いつも時間にルーズな部下が、大切な商談に遅刻してしまいました。皆さんならどうしますか?激怒した社長は「なんで、遅刻したんだ」「なんで、いつもお前はそうなんだ!」と怒鳴りつけました。心中お察しします。これも大切なプロセスかもしれません。しかし、コーチングの目的は相手の「行動」にフォーカスしています。
対話することによって、部下が自発的に、①行動を始める ②行動を変える ③行動をやめることが目的です。

改めて、時間がとれて落ち着いたところで、一度問いかけてみてはいかがでしょう「相手の方はどんな気持ちだったんだろう」「遅刻した一番の原因は、なんだと思う?」「朝、早く起きるために止められることは何かある?」


人は「なぜ~ない」と問いかけられると責められている感じがして、言い訳を考えます。「どうしたら~できるだろう」と問いかけると、問題そのものに視点が移ります。「以前、早起きしていた時の時間の使い方はどんな感じだった?」「これを挽回するくらいの人間関係を築くために君が全力でやることは?」
相手のために問いかけてみることは、少し時間も必要ですが、部下の持つ可能性や価値観を知るきっかけになることがあります。

私がコーチングの勉強を始めたころ、息子たちは幼稚園に行っていました。やんちゃ盛りの男の子が二人、今思えば、よくこんな問いかけをしていました。「なんで、もっと早く着替えられないの?」「なんで、こぼさないで食べられないの?」「なんで、仲良くできないの?」という感じです。否定形で問いかければ、自分のできない理由、ダメな理由を検索に行きます。そして次第に失敗しないようにと行動は小さくなり、母親の顔色を見て行動しようとします。成功したことは話すのに、失敗したことや悪い結果は話さないので、改善策が見つからず同じことを繰り返してしまいます。つまり、母親に小言を言われないようにするのが、子どもたちにとっての行動基準となってしまいます。
子どもの思考の習慣は、親によってつくられているとしたら大変なことだと思いました。

人は得てして、人を動かすために問いかけてしまいます。それは相手のためではなく、自分のためだったりします。もちろん自分のためにお願いすることも時には必要ですが、効果的な質問を続けていくことで、自ら考える習慣も付き、長い目で見ると相手のためになるのです。
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