中部経済新聞
「また会いたいと思う人は、どんな人ですか?」
と質問すると、すばらしい生き方や存在感で自分に勇気をくれた人や、前向きな姿勢に心を打たれたという経験など、自分にいい影響を与えてくれた人のことを話してくれます。
それと同じくらい多いのは、「自分のことを認めてくれた人」。たとえば母親であったり恩師だったり、特別な指導をしてくれた人でなくても、ひたすらに自分を信じて見守り、自分の背中を押してくれた人のことを話してくださいます。
公開講座で、相手の存在を認める「承認」のワークをした時の話です。参加者の中に50代後半の主婦の方がいらっしゃいました。得意の洋裁についてプレゼンをしてもらい、話し方、見た目、内容について全員で「承認のフィードバック」をしてみました。「笑顔で話していたので、聴きやすかったです」「私も一緒に洋裁をしたくなりました」「桜色のスカートがとっても似合っていて素敵」などなど。その瞬間、彼女はしゃがみこんで泣きだしてしまいました。
しばらくして、「今まで、ずっと一人で娘を育ててきて、誰もほめてくれないし、認めてくれなかった。友だちもいなかったし、自分について話をすることもこの30年なかった」と言われるのです。人には承認されたいという欲求があります。自分のことを認めてもらい、「自己重要感」を満たされると力を発揮します。
その主婦の方は、その後の講座ではリーダーとなりました。自分が認められたことでお子さんを承認することもできるようになりました。結果、ご自身は生きがいを見つけて美しくなり、親子の関係がとても良くなったと話してくださいました。
「ほめる」ことがなければ、「認めれば」いいのです。「髪切ったね」「青いネクタイだね」見たことを、そのままを伝えることも承認なのです。
人前で名前を呼ばれたときに全身に電流が走る感じ、一度は経験したことがありますよね。上司の一言は、良くも悪くも響くのです。
前回、前々回のコラムを読んで、話しを聴いても、いろんな問いかけをしても、まったく変化がないのなら、まずは部下の「自己重要感」を満たしてあげる必要があります。
採用したから、毎月給料を払っているから、存在を認められていると感じているかといえば決してそうではありません。いちいち、わざわざ、声をかけ、笑いかけ、話しを聴き、変化に気づき、背中をたたき、目を合わせることで、人はそれを実感していくのです。