メディア掲載
MEDIA Coverage

コミュニケーション診察室第20回

自分で決める

中部経済新聞
人は指示命令をされると、「やらされ感」を感じます。しかも、1から10まで指示されれば、指示された通りにしっかりとやろうとするため、相手の期待を超えることがありません。不思議なもので「指示命令」の中には、言葉には出さなくても「これくらいは考えてくれるだろう」という期待も混じるため、指示通りのものができあがってきたとき、「ふむ」としか感じられません。感動や感謝は「自分の期待を超えたとき」にしか、湧き上がりにくいものです。
つまり、指示命令を出し続けていると「やらされ感」と「当たり前」が蔓延していき、双方にとって、つまらなくて成長を感じられない毎日になってしまいます。

指示命令型のアプローチを質問提案型に変えることで自発性を育てたいのです。しかし、質問しても答えが出ないときには提案やリクエストが必要となります。ビジョンを描いた後の行動計画での「提案」の仕方には2つのポイントがあります。それは、「相手に選択させる」ことと「許可を得る」ことです。

提案する時のスタンスは、新しい視点を提供すること。
「イエス・ノー」の選択権は部下自身にあり、あくまでもアイデアや情報を与えるものです。
できたら提案内容も「やる」「やらない」の2拓より、「○○を今月、○○は来月に行う」など3拓がいいです。相手に選択してもらうことで「自分で決めた」感じがします。

自分で決めてやったことは、失敗しても自己責任で考えやすく、すべてノウハウとして蓄積されて成長してしまいます。
ちなみに、部下の立場になれば、上司の指示のさらに上を行く宣言をするだけで「やらされ感」を手放せるのですが・・・。

また、ストレートに伝えたい時こそ「許可を得る」ことで相手がメッセージを受け取りやすくなります。「私の経験を話してもいいかな」「私の感じたことを話してもいいかな?」この前置きがあるだけで、「お前良く聞け!」という押し付け感がなくなり、正論で論破したときより、逆に聞き耳を立てることが多いものです。

なかなか難しいことではありますが、時に、部下からの前向きな批判や提案を受け入れる心の準備がある上司の下には、同じように、少々厳しすぎる批判や提案でさえ、感謝とともに受け入れる準備のある部下がいる可能性が高いです。
なぜなら、心から「すまん」「ごめん」が言える上司からは、肝心な時に自分を裏切らない、約束を守ってくれるんだというメッセージが暗黙の中で伝わります。信頼感や安心感があるからこそ「自分で決めることができる」のです。
日々、無意識にしているコミュニケーションの大切さも身にしみています。
このページのトップに戻る