中部経済新聞
「誰でも風土をつくることができる」
「ありがとう」は言葉のハグ
私たち人間がこんなに長い歴史生きてこられたのは、人と人との協力関係があったからこそだといいます。「誰かのために」の「誰か」が明確でなくても必ず誰かの役に立つのが、笑顔や挨拶です。
ビルのメンテナンス業を全国に展開するコニックス株式会社さんは、働く人の6割がパート、アルバイトさんです。清掃や警備などキツイと言われ、孤独になりがちな現場で働く彼らのモチベーションをあげる秘訣を吉田治伸社長にお聞きしたところ、とにかく笑顔と挨拶を徹底することで成功体験を持つことだということでした。
警備の時間、黙って無表情で立っていても一日、笑顔で「おはようございます」と声をかけても一日。それならば後者を選択させてあげたいと、徹底的に笑顔や挨拶のトレーニングをするそうです。
例えば、入社時のスマイル研修では、相手がそっぽ向いた自己紹介と笑顔でうなずいてくれる自己紹介を体験します。どちらが気持ち良いのか?これだけでも、コミュニケーションの重要性がわかります。
はじめは「そんなこと業務に関係ない」、「やれと言われていない」と言って嫌がるスタッフさんがいても、そのうち現場でたった一人で始める人が出てきます。
そこで、「このビルに来ると、私いつも元気もらえるわ」「ありがとう」とメッセージがもらえるようになります。仲間同士で褒めあったり、感謝しあったりすれば、格段とやる気がでてきます。「こうしたらもっと楽しくなる」にこだわり続けることで、毎日、「誰か」から「言葉のハグ」が届きます。
人からの承認や感謝のメッセージは、喜びとなり、生きがいとなりその場の風土となっていくんだよ。でも、「最初のひとり」が大変なんだ。とも話してくださいました。
社員さんが仕事を通して体験できる喜びを得るためなら、伝え続けることに妥協はないそうです。まさに、人が仕事を通して幸せを実感できる瞬間ですね。
これは会社だけでなく、身近なところで体験している方も多いはずです。たとえば朝早く起きて、ウォーキングをしていると行き交う人同士が挨拶をします。昼間は街ですれ違っても挨拶しないのに、朝の時間はなぜだか慣例になっています。体験した人はその感覚を知ることができ、翌日には自分から「おはようございます」と声を上げているものです。知らない人との挨拶は、なかなか気恥かしさや他人事から抜けられないのですが、実践した人だけが実感し成功体験となります。
時代とともにメールなど、活字だけで情報がやりとりできて便利になりましたが、気持ちをリアルに「表現する」ことが苦手な人が多いと感じます。下手くそでも不器用でも伝えようとしなければ伝わらないのです。笑顔で「ありがとう」を頂けることがどれだけ人をハッピーにすることなのか誰でも体験したことがあるはずです。「コミュニケーションは自分から」親、子、上司、部下、だれからでもスタートして風土をつくることができるのです。
次回は、私がどうしてこんな活動を始めたのかをお話したいと思います。